2022年6月、ブラジル代表vs日本代表が新国立競技場で開催された。
南米からの長旅と連戦によるベストコンディションではない中で、ブラジル代表の組織的ハイプレスから始まり、ネイマールのヒールパスからのファーストシュートというブラジルらしい創造性あるゲームの入り方。
大雨によるピッチコンディションでも、コンパクトかつ前線からの連動した組織的なハイライン・ハイプレスを繰り返すブラジル。
相手陣内でボールを奪われても、ラインを下げることなく、更に前に前に何度も奪い返すチャレンジ。
一方で、ブラジルが低い位置で守備する時間帯も、必ずカバーリングとの2対1の数的優位状況を作り続け、ほぼほぼ日本は何も手の打ちようがないという状況。
後半、日本も前田などスピードを武器にブラジルのハイラインの裏を突こうとするも、絶妙なポジショニングと早いカバーリングに潰される日本の速攻。
頼みの綱のジョーカー三苫も、エデル・ミリタウに個の能力によりシャットアウト。
スタッツは日本のシュート5本に対して、ブラジル22本。
まさに「攻撃は最大の防御」のワールドクラスバージョン。
ブラジルの攻撃力には脱力や遊び心(逆を取ったり、タイミング外したり、自分の創造性を混ぜたり、ルールの範囲内でマリーシアをフル活用したり)などの武器があるが、この辺の違いを認識できる日本人指導者がどのくらいいるのだろうか。
日本では遊び心などにおいても、社会で「グレーゾーンを進むことを許さない」という文化と、サッカー界でも「サッカーは遊びじゃない。人間教育だ」というような文化は、かなり似てる気がする。
やはり、「遊び心」が最後の最後、トップクラスの決定力の差に反映されてくるのだろうと思う。
日本はこれから強豪国に勝つためにどんな分析・反省・改善をしていくのだろうか。
長旅20時間かけて韓国と木曜日に戦い、月曜日に日本戦、本来のプレーとはほど遠い中でも、ブラジルは格の違いを見せた。
この敗戦は、予想はしていたものの、海外トップリーグで活躍する日本人選手がいくら増えても、文化的に埋まらない溝があるのだろうなという未来も垣間見えたように思う。
ブラジルのような世界トップクラス相手にも対等に通用する、やられてもやり返せる「日本人にしかできないサッカー」を日本人は真剣に考える必要があるのではないか。
【執筆者】吉澤 正登
【執筆者】吉澤正登
社会投資家 兼 海外大学名誉教授
プロサッカークラブ ファウンダー
FC大阪を発足し、グレミオとの連携やFC大阪ブラジルの設立など、ブラジルサッカーの発展にも尽力。