2022年4月某日、ブラジルの4部リーグに相当するセリエDの試合を観戦する為リオデジャネイロ州ノヴァイグアス市に所在するエスタディオ・ジャニオモラレスに足を運んだ。
個人的にはサッカー大国ブラジルの下部リーグではどのような雰囲気なのかという期待を膨らませていた。
しかし、そこでは自分の想像とはかけ離れている現実を目にすることになった。
試合開始1時間前に会場に到着。しかしスタジアムの周りには日本の様に集客プロモーションが開催されているどころか、サポーターでさえもほとんどいない状況だった。
スタッフに案内され球場内のレストランで休憩をすることにした。周りを見てみるとノヴァイグアスFC持ち前のグッズショップ、何面もと広がるグラウンド、クラブハウス、食堂があることに気が付いた。
試合が開始とともにスタジアム内へ入ると観客は100人程度だった。
そして、私は「何故この観客数・運営方法で立派な設備も存在しクラブ運営が成り立つのだろうか。」という疑問を抱き、その疑問を晴らす為クラブのマーケティング部門で働いているアレクサンダーさんにインタビューを行った。
現在ブラジル4部リーグを戦うノヴァイグアスFCの主な収入源は、移籍金とスポンサー収入で、チケットやグッズなどの売り上げは微々たる物だ。また、試合前のプロモーションに関してはブラジルではそのような文化は無い特に無いそうだ。
ブラジルにおいて移籍金はとても儲ける事が出来ると彼は話していた。例えば、ある一人の選手が小学生年代からユース年代まで自クラブで育てた場合、クラブはその選手が国内外問わず移籍する度に移籍金の50%を常に受け取ることが出来る。
ノヴァイグアスFCにはそういった選手が多く在籍していた事もあり沢山の資金を受け取ることが出来るのだ。即ち育成クラブと呼んでも過言ではないだろう。また、ブラジルの強豪クラブであるフラメンゴFCやサンパウロFC等はブラジル国内で選手を育てヨーロッパや国内の他クラブに選手を売り出す事によって年間で50億円近くの収入を得ている。
Jリーグでは1年契約が大半を占めているので中々移籍金でこれだけの額を設けるのは難しいだろう。
そしてブラジルのクラブでは育成部でさえも心理カウンセラー、トレーナー、栄養士等が選手を育成する為の体制が整っているクラブが多く存在する。
今回インタビューをしたノヴァイグアスFCも4部のクラブではあるが、サッカーをする為の素晴らしい環境、体制が整っていた事に驚きを隠せなかった。それだけ育成環境に投資する価値があるのだろう。
また、ここ最近のJリーグでは選手育成にコミットする為に、自チームで育成した選手を一定人数トップチームに登録しなければならないホームグロウン制度が設けられ、徐々に浸透しつつあるともいえるだろう。
しかし、この制度の根本的な目的はアカデミー現場を変える事や競技レベルの向上であるため、ブラジルのクラブの目的とは差異がある。
但し、日本でも選手を海外に売り出す事が出来れば連帯貢献金制度で多くの収入を得る事も可能だ。今後、日本にも各クラブの育成組織が発展し世界に羽ばたく選手を更に多く輩出する事が出来ればブラジルのように移籍金で大きく儲ける事の出来る日が来るかもしれない。
参考文献
Venda de jogadores à Europa cai e clubes terão de buscar salva-vidas (uol.com.br)
ホームグロウン制度は日本サッカーを強くするのか。Jリーグ6クラブが不遵守 | 3ページ目 (3ページ中) | Football Tribe Japan (football-tribe.com)
2024シーズンのホームグロウン制度 規定人数について | 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ) (jleague.jp)
【執筆者】堀 武佐士
ブラジルのリオデジャネイロへ留学中の大学生。将来はJリーグのブラジル人選手通訳とともに、地域に根差すクラブの仕事にも興味を持つ。