“守り切る” という戦術は存在しないように見えた。
W杯史上最多、6度目の優勝を目指すブラジルは、クロアチアとベスト8進出を掛けた死闘を迎えた。
延長前半にエースのネイマールが値千金の先制点を奪い、強かにブラジルらしく、延長後半をクローズに掛かる姿勢であった。
けれども、交代カード5枚を使い切った後、サイドバックのダニーロを含めた数名の選手達のコンディションの異変が現れる。
一般的には、リードの状況を活かし、しっかり引いて守備からカウンターというクローズ戦略が王道かもしれない。
しかし、ブラジル代表は攻撃的な姿勢を失うことなく、攻め続け、相手にとって理想的なカウンターを受けた。
「なぜ、守備の厚みを作りながら、守備ブロックで構えながら、1-0で勝ち切る道を選ばなかったのか?」多くのサッカー関係者が思ったに違いない。
それでも、”守り切る”を選ばずに、守備のバランスを崩してでも、攻撃的なサッカーで最後まで戦い続けることが、ブラジルサッカーのDNAであり、プライドなのかもしれない。
【執筆者】吉澤 正登
【執筆者】吉澤正登
社会投資家 兼 海外大学名誉教授
プロサッカークラブ ファウンダー
FC大阪を発足し、グレミオとの連携やFC大阪ブラジルの設立など、ブラジルサッカーの発展にも尽力。